「年数を重ねて室内の傷みも目立ってきた自宅。手を加えずに売りに出してよいのか、先に改装を済ませておいたほうが有利なのか…」
住まいを手放そうと検討を始めた段階で、多くの方がまず悩むポイントではないでしょうか。
先に要点を申し上げると、売り出す前に改装工事をおこなう必要は基本的にありません。
中古物件を探している買主は、価格・立地・広さといった条件を見比べながら検討することが多く、売主側がかけた改装費がそっくり売値に上乗せされるとは言い切れないためです。
この記事では、原則としてリフォームが要らないとされる理由をはじめ、例外的に実施を検討したいケース、箇所ごとの費用の目安、ハウスクリーニングや現状渡しとの違い、さらに費用対効果の試算までを順を追ってまとめています。
最後までお読みいただくことで、ご自身の住まいに合った売り出し前の準備を見極められるようになることを目指しています。
※2026年10月現在の情報です。最新情報は公式サイトでご確認ください。
マンションを売る前の改装は基本的に不要|結論と根拠

ここでは、売り出し前にリフォームをおこなうかどうかについて、基本となる考え方と裏づけになる理由を順に確認していきます。
結論:売却前の改装は多くの場合で不要
売り出す前にマンションへ手を入れる必要は、基本的にはないと考えられます。
かけたリフォーム代を売値に上乗せするのは難しく、結果として売主の負担だけが残るケースが少なくありません。
中古マンションの値段を左右するのは、立地や築年数、専有面積、管理の状況といった物件そのものの条件が中心で、室内がきれいかどうかによる価格への影響は大きくないといわれています。
購入する側にも、入居後に好きな仕様へ改装したいと考える人が多いため、売主があらかじめ手を加えた内装が喜ばれるとは言い切れません。
最初に取り組みたいのは、複数の不動産会社に査定を依頼し、いまの相場をできるだけ正確につかむことです。
リフォームが不要と考えられる3つの根拠(費用回収の難しさ・好みの不一致・買主による改装前提)
リフォームを原則として控えたほうがよいとされる背景には、主に3つのポイントがあります。
理由1:かけた費用を売値に反映させるのが難しい
中古マンションを探す人の多くは、少しでも相場より低い価格で手に入れたいと考えています。
100万円をかけて室内を改装しても、そのぶん売値を100万円高くできるとは限らないのが現実で、改装済みの物件は価格が高めに見られやすく、値下げを求められるきっかけになることもあります。
理由2:売主の好みと買主の好みが一致しにくい
クロスの色合いやフローリングの素材、キッチン設備のグレードなどは、好みが人それぞれ異なる部分です。
売主がよいと考えて決めた仕様でも、買主の感覚に合わなければ、購入をためらわせる原因になる可能性があります。
理由3:買ってから改装するつもりの買主も少なくない
中古マンションを検討する人のなかには、はじめから「入居前に自分の手で改装する」つもりで物件を選んでいる人もいます。
こうした買主から見れば、売主が実施した改装は、不要なコストが価格に含まれているように感じられます。
国交省データからみる買主のリフォーム済み物件への評価
国土交通省の「住宅市場動向調査(令和7年度)」によると、中古の集合住宅を購入した理由としては手頃な価格が重視されやすい一方、リフォーム済みである点や、改装すれば快適に暮らせるという点を評価する人も一定の割合で存在することがわかります。
| 観点 | おおまかな傾向 |
|---|---|
| 手頃な価格 | 重視される傾向がある |
| リフォーム済み・改装前提であることへの評価 | 一定の評価はあるものの、価格ほど重視されない |
| 立地や広さといった基本的な条件 | 重視される傾向がある |
正確な最新数値については、調査の本体(国交省住宅市場動向調査)をご参照ください。
購入を決める際には価格や立地が重視されやすく、リフォーム済みという点はプラス材料にはなりえても、最も優先される条件になるとは言い切れません。
以上を踏まえると、売主が多額の費用をかけて改装しても、かけた金額に見合う効果が得られない場合もあると考えられます。
リフォームの要否を見極める5つの基準

「うちのマンションは手を入れずに売り出して大丈夫だろうか」と迷う売主の方は少なくありません。
ここからは、リフォームが必要かどうかを見極めるための5つの基準を順に紹介します。
判断基準①:築年数と傷みの度合い
築20年を超えていて、なおかつ水回りや壁紙、床に見てわかるほどの傷みがあるケースに限って、一部分に絞ったリフォームを考えてみる余地が出てきます。
反対に、築15年以内で目立った傷みも見当たらないのであれば、工事に踏み切る必要性はそれほど高くないでしょう。
築年数が古くても、「水回りが今にも壊れそう」「カビや臭いが落ちない」といった、買主がすぐに手直しが要ると感じる部分がなければ、現状渡しのままでも売却を進められる可能性は十分にあります。
見極めの目安は「内見に来た買主が思わずためらうほどの傷みがあるかどうか」です。普段の暮らしで自然についた程度の使用感であれば、買主もある程度は織り込んで検討してくれます。
判断基準②:近隣相場と競合物件のコンディション
同じマンションの別住戸や周辺の似た条件の物件と見比べて、自分の部屋だけが極端に見劣りしていなければ、リフォームを急ぐ理由はあまりありません。
近い条件で成約した事例(専有面積・築年数・室内の状態)を不動産会社から取り寄せて把握するところから、検討をスタートしましょう。
同じ建物のほかの部屋が「リフォームせず現状のまま」で売れているのであれば、自分の部屋も同じ方針で売り出すほうが、市場の感覚に合ったやり方といえます。
判断基準③:工事費用と値上がり見込みのバランス
工事に踏み切るかどうかを筋道立てて決めるなら、「かけた費用に対して売値がどれだけ上がりそうか」の比率が1.0倍を上回るかが目安になります。
比率が1.0倍に届かない見通しなら、工事は見合わせるほうが理にかなっています。
仮に100万円をかけて工事をしても、売値の上昇が80万円にとどまる見通しであれば、売主は20万円を自己負担することになります。
赤字の工事を避けるためには、「リフォームを前提にした査定額」と「現状のまま売る場合の査定額」の両方を、複数の不動産会社にシミュレーション形式で出してもらい、見比べる方法が役立ちます。
判断基準④:売り出しまでの時間的なゆとり
リフォームを候補に入れられるのは、売り出しまでに3か月以上のゆとりがあるケースに限られます。
工事期間は箇所によって異なるものの、おおむね1〜3か月ほどかかるため、売却を急ぐ場面ではハウスクリーニングや価格交渉への対応で乗り切るほうが現実に即しています。
住み替えや相続、離婚などで売る時期があらかじめ決まっているなら、リフォームを無理に予定へ組み込むより、内見前の念入りな掃除とちょっとした補修でカバーするのが手堅い方法です。
判断基準⑤:複数の不動産会社による査定時の見解
最後の決め手としては、不動産会社3〜6社程度から見解を集めて比べたうえで結論を出すのが手堅いといえます。
大半の会社が「工事はいらない」と見ているならそれに従い、「〇〇の箇所だけは直しておいたほうがよい」と複数の会社が共通して指摘した部分は、前向きに手を入れることを考えましょう。
見解がばらつくときは、それぞれの会社が挙げる裏付け(市場の動き・過去の成約事例・想定される買主層)を比べ、納得できる根拠を示した会社の考えを取り入れるのが理にかなっています。
1社の見解だけを頼りに大がかりなリフォームを決めてしまうのは危険が大きく、控えたほうがよいでしょう。
売却前に手を入れたほうがよい例外3パターン

基本的には手を加えずに売り出せると考えられる一方で、改修に踏み切ったほうが理にかなう場面もあります。
ここでは、該当しやすい3つの状況を順に見ていきます。
設備の故障・破損で暮らしに不便が生じているケース
給湯器や配管、電気設備といった日々の暮らしを支える設備に不具合が見つかったときは、内覧を迎える前に最低限の修繕を済ませておくことが勧められます。
改装と呼ぶよりも、修理や補修の範囲に収まる対応といえます。
不具合を承知のうえで売り出し、契約で取り決めた品質を満たさないまま物件を引き渡すと、買主から民法第562条にもとづく追完請求や、民法第563条にもとづく代金減額請求などを求められるおそれがあります。
物件の価値を高める工事ではなく、欠点を解消する修理だけに範囲を限定することが、このケースで押さえておきたい考え方です。
内覧者に悪い第一印象を与えかねない傷みがあるケース
きつい臭いやカビ、目立つ汚れ、壊れた壁などがあり、見学に来た人の印象を大きく損なう傷みが見られるときに限って、部分的な手入れを考えます。
もっとも、全面的な改装までは必要なく、専門業者による清掃と部分的な補修で足りる場合がほとんどです。
どこを直すかは、内覧の前に不動産会社へ確認を頼むと客観的に見極めやすく、第三者の視点で挙がった箇所だけに絞って手を入れると、かけた費用に見合う効果を得やすくなります。
部分的な補修にかかる費用は数千円〜数万円ほどが目安とされ、数十万円〜数百万円かかる全面改装と比べてはるかに少ない出費で、見た目の印象を良くできる可能性があります。
買取再販業者に物件を手放すケース
業者にマンションを買い取ってもらう場合、価格は仲介で売ったときの相場を下回りやすく、70〜80%程度にとどまるとされる例も見られます。(物件の傷み具合や立地によって幅があります)
改装は買い手に任せて業者へ売るのか、室内を整えてから仲介で買主を探すのかは、早く現金を手にしたいのか、少しでも高い価格を目指したいのかという売主自身の優先度に応じて選びます。
買取再販業者は、取得後に自ら改装することを織り込んで買取額を算出しています。売主が事前に工事を済ませても、その費用分が査定額に反映されるとは言い切れません。
買取も選択肢に入れるなら、いくつかの業者に見積もりを依頼し、手を加えない状態での買取額と、仲介で売れそうな価格を見比べたうえで決めると安心です。
リフォームに頼らず売却価格を引き上げる方法|ハウスクリーニング・部分補修・現状渡し

リフォームを行わないと決めたときに選べる手段を、具体的にまとめました。
かかる費用と得られる効果の釣り合いを考えると、以下の方法を組み合わせるのが多くの売主に合ったやり方といえます。
現況のまま引き渡す「現状渡し」の基礎知識
中古マンションの売買において、現状渡しはごく一般的な引き渡し方法で、売る側・買う側のどちらにとっても無理のない形とされています。
売買時の状態を変えずに物件を引き渡す契約の形のことで、内装の傷みや設備の使用感などを売主が直さずに買主へ渡すやり方です。
とはいえ、現状渡しを選べば売主の責任がまったく生じなくなるわけではありません。
2020年4月に施行された改正民法では、契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)が売主に課されると定められています。
※参照:住宅業界に関連する民法改正の主要ポイント|国土交通省
雨漏りや配管からの水漏れなど、契約書・告知書の内容と食い違う不具合が引き渡し後に見つかると、買主から補修や代金の減額、解除などを求められる可能性があります。
こうしたトラブルを避けるには、売り出し前に建物状況調査(インスペクション)を受けておくと安心です。
ハウスクリーニングにかかる料金の目安と期待できる効果
3〜15万円程度という手頃な出費で内覧時の見え方をぐっと良くできる点で、ハウスクリーニングはコストに見合う効果を得やすい方法の一つです。
部屋の広さ(間取り)ごとのおおよその料金は、次の表を参考にしてください。
| 間取り | 料金の目安(参考) | 作業にかかる時間 |
|---|---|---|
| 1R・1K | 2.5〜5万円 | 半日〜1日 |
| 1LDK・2DK | 4〜8万円 | 1日 |
| 2LDK・3DK | 6〜10万円 | 1〜2日 |
| 3LDK・4LDK | 8〜15万円 | 2日 |
中でも効果を感じやすいのは、浴室・トイレ・キッチン・洗面所をまとめて依頼する「水回り4点」のクリーニングです。
築年数が経っていても、水回りに清潔感があれば買主が抱く心配を和らげることにつながります。
小さな補修やホームステージングなど費用を抑えた工夫
数千円〜数万円ほどで済む軽い補修に加え、家具の置き方や光の取り込み方、小物の使い方を工夫するホームステージングによっても、内覧時の印象は大きく変えられます。
たとえば、次のような取り組みが挙げられます。
- 消臭剤も使いつつ、玄関や水回りをしっかり掃除する
- 壁にできた小さな穴やキズ、汚れをDIYで直せる範囲で補修する
- 古くなった照明をLEDに取り替える(数千円〜)
- 観葉植物やカーテンを使って部屋の雰囲気を整える
- 使っていない家具や荷物を運び出し、部屋を広く見せる
いずれもリフォームに比べて費用はけた違いに少なく済む一方で、買主の購入意欲を後押しする効果が見込めます。
不動産会社によっては内覧に向けた準備について助言をもらえるので、まずは媒介契約を交わした会社に聞いてみるとスムーズです。
3択比較:リフォーム後に売却/現状渡し/ハウスクリーニングだけ
ここまで解説した3つの選択肢を、表にまとめて比べてみます。
多くの物件では、現状渡しとハウスクリーニングを組み合わせる方法が理にかなった選び方になりやすいといえます。
| 比べる項目 | リフォームしてから売却 | 現状渡し | ハウスクリーニングだけ |
|---|---|---|---|
| 最初にかかる費用 | 50〜300万円超 | 0円 | 3〜15万円 |
| 売却期間への影響 | 工事に1〜3か月かかり長引く | すぐに売り出せる | 数日で終わる |
| 内覧時の印象 | 好印象を与えやすい | 物件の状態による | 清潔感があり好印象 |
| 値下げ交渉を受けるリスク | 中(リフォーム費用の上乗せは受け入れられにくい) | 中〜高 | 低〜中 |
| 契約不適合責任のリスク | 低(新しくした設備は心配が少ない) | 中(建物状況調査を受けると安心) | 中 |
| 向いているケース | 同じマンションの住戸が軒並み高水準なとき | 大半の物件 | 大半の物件・水回りを重視する場合 |
| コストに対する効果 | 低め | 高め | いちばん高い |
3択のどれを選ぶかは、「物件の現在の状態」「売却までに使える時間」「かけられる予算」の3軸を基準に検討するとよいでしょう。
大半の方には、現状渡しとハウスクリーニングに、必要な範囲の部分補修を加える組み合わせが、費用とリスクの釣り合いがとれた方法といえます。
リフォームが要るかどうかは、複数の会社に査定を頼み、「リフォームした場合の査定額」と「現状渡しでの査定額」を見比べて決めると安心です。
LIFULL HOME’Sの一括査定を利用すると、入力は一度で済み、複数の不動産会社へまとめて査定を依頼できるため、リフォームを判断するための相場観をスムーズに把握できます。
\まずは査定額を比べてみる/
リフォームなしで内覧時の印象を高める具体策

室内に手を加えなくても、買主が内覧で受け取る印象を左右する要素は少なくありません。
ここでは、内覧までに整えておきたい準備項目、媒介契約の選び方、建物状況調査の使い方を順に取り上げます。
内覧に備える準備項目(掃除・片付け・明るさ・におい)
内覧の日までに取り組みたい基本的な準備を、かかる費用ごとにまとめました。
リフォーム費用と比べればごくわずかな出費で済み、効果も期待しやすい対策ばかりです。
| 対策 | 具体的な内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 玄関まわり | たたきを水拭きし、靴は片付けて消臭剤を置く | 数百円〜 |
| 水回り | 浴室・キッチン・トイレを念入りに掃除(専門業者への依頼がおすすめ) | 3〜10万円(プロ依頼時) |
| 明るさ | カーテンを全開にし、窓ガラスを磨いて照明もすべてつける | 数百円〜 |
| におい | 空気の入れ替え、消臭剤の使用、生活臭のもとを取り除く | 数千円〜 |
| 片付け | 使わない物を運び出し、収納の中も見られる前提で整える | 0円〜 |
| 演出 | 観葉植物や清潔なタオルを置き、香りはほのかに | 数千円〜 |
なかでも重視したいのは「におい」と「明るさ」です。
生活臭やペット・タバコのにおいが室内に残っていると、買主の購入意欲が下がりやすくなります。内覧の予約が入った段階から換気と消臭に取りかかり、当日も買主が訪れる直前まで続けておくと安心です。
部屋を明るく見せるには光の取り込みが土台となるため、天気のよい日の日中に内覧の時間を設けるのも効果的な工夫です。
媒介契約の種類が売却準備に与える影響
どの媒介契約を結ぶかによって、リフォームの要否や内覧の準備を不動産会社へ相談するときのしやすさも変わってきます。
契約の形は一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の3種類で、いずれも宅地建物取引業法第34条の2の定めにしたがって結ばれます。
| 契約の種類 | 複数の会社との契約 | 自分で見つけた買主との取引 | 売主への報告 | レインズへの登録 |
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 可 | 可 | 任意 | 任意 |
| 専任媒介 | 不可 | 可 | 2週間に1回以上 | 契約日から7日以内 ※休業日を除く |
| 専属専任媒介 | 不可 | 不可 | 1週間に1回以上 | 契約日から5日以内 ※休業日を除く |
専任媒介や専属専任媒介では不動産会社が中心になって販売を進めるため、リフォームが必要かどうかの助言や内覧準備の手助けを得やすい傾向が見られます。
他方で一般媒介は、複数の会社の見立てを比べられる利点があるものの、会社ごとの販売活動の優先順位が下がりがちな側面も持ち合わせています。
建物状況調査(インスペクション)を活かす方法
売り出す前に建物状況調査を受けておくと、契約不適合責任をめぐるリスクを軽くでき、買主に安心して検討してもらうための手立てになります。
具体的には、建築士などの専門家が建物の傷み具合や不具合があるかどうかを第三者の立場で調べる仕組みです。
売主が自ら実施する利点は、主に次の3点です。
- 見えない不具合を前もってつかめる:引き渡しを終えた後に契約不適合責任をめぐって揉める事態を避けやすくなる
- 買主が決断しやすくなる:第三者による調査結果が判断の拠り所となり、成約に至るまでの期間を縮められる可能性がある
- 価格交渉で押し込まれにくい:「傷み具合がわからないので値下げしてほしい」といった交渉の余地を小さくできる
かかる費用はおおむね5〜10万円程度が目安とされ、リフォームに要する金額と比べると大幅に抑えられます。
築年数を重ねたマンションで、契約不適合責任に不安を感じている方にとっては検討する価値の高い方法といえるでしょう。
リフォーム箇所ごとの費用目安と投資効果

ここでは、リフォームに踏み切る場合に知っておきたい箇所ごとの費用目安と、投資に見合う効果が得られるかどうかをまとめます。
「どの箇所にどれだけお金がかかり、売値にどの程度反映されるか」を数字でつかんでおくと、筋の通った判断がしやすくなります。
箇所ごとの費用目安(壁紙/床/水回り/キッチン/浴室/トイレ)
箇所によって費用の目安は大きく異なるため、どこにお金を回すか順番を決めて配分することが大切です。
壁紙や床といった表面だけの工事は費用を抑えやすく、キッチン・浴室・トイレなど水回りをまるごと入れ替える工事は高額になりがちです。
| 工事箇所 | 目安費用(万円・参考) | 投資効果 |
|---|---|---|
| 全室の壁紙張替え | 10〜30万円 | 比較的高い |
| 床(フローリング)の張替え | 20〜80万円 | 中程度 |
| 全室ハウスクリーニング | 3〜15万円 | 高い |
| キッチンの全面入れ替え | 50〜150万円 | 低い |
| 浴室の全面入れ替え(ユニットバス) | 60〜150万円 | 低い |
| トイレの全面入れ替え | 15〜40万円 | 中程度 |
| 給湯器の交換 | 15〜30万円 | 修繕として必要時に実施 |
投資効果が出やすい箇所・出にくい箇所
投資効果という点では、少ない費用と短い工期で見た目の印象を上げられる対策ほど効率がよいといえます。
反対に、キッチンや浴室をまるごと入れ替える工事は出費がかさむわりに売値へ上乗せしにくく、投資効果の低い箇所と考えられています。
買主には「入居後に自分の好きな設備へ替えたい」という希望が根強く、売主が選んだ設備がそのまま評価されるとは限らない点が理由として挙げられます。
| 比較項目 | 効果が出やすい | 効果が出にくい |
|---|---|---|
| 対象 | ハウスクリーニング・壁紙・小規模な補修 | キッチン・浴室の全面入れ替え |
| かける費用 | 数千円〜30万円ほど | 50万円〜150万円超 |
| 価格面への効き方 | 見た目の向上で値下げ交渉を防ぎやすい | かけた費用を取り戻しにくい |
| リスクの大きさ | 小さい | 大きい(仕様が買主の好みに合わないおそれ) |
手取りで比べる「100万円かけてリフォーム」と「100万円の値引き」
同額の100万円を使う前提で、「リフォームする」場合と「値引きに応じる」場合のどちらが売主の手元に多く残るのか、試算して比べてみます。
【モデルケースの前提】
・売却するマンションの価格: 3,000万円(取得費は売却価格と同額とし、3,000万円特別控除の範囲内と仮定)
・居住用財産として3,000万円特別控除を適用(譲渡益が生じても控除の範囲に収まるものとして簡略化)
・仲介手数料は法定上限で計算: (売却価格 × 3% + 6万円) × 1.1
・リフォームにかける費用、または値引きする額: 100万円
| 内訳 | A:リフォームする | B:100万円値下げ | C:リフォームも値引きもしない |
|---|---|---|---|
| 売却価格 | 3,000万円 | 2,900万円 | 3,000万円 |
| リフォーム代 | -100万円 | 0円 | 0円 |
| 仲介手数料(おおよそ) | -105.6万円 | -102.3万円 | -105.6万円 |
| 売主の手取り(おおよそ) | 約2,794.4万円 | 約2,797.7万円 | 約2,894.4万円 |
試算結果からは、次の3点が見えてきます。
- A(リフォーム)とB(値引き)の差はわずか:手取りの違いは約3.3万円にとどまり、ほとんど差がつきません
- リフォーム後に値引きまで求められると最も不利:手取りが約100万円目減りし、自己負担がはっきりと膨らみます
- リフォームも値引きもせずに売却できたケース(C)で手取りが最大に:手取りは約2,894万円となり、最も効率のよい結果です
要するに、「同じ100万円をかけるなら値引きのほうがリフォームより得」という話ではなく、「100万円をかけずに売り切る方法を探ること」こそが本来の答えといえます。
たとえばハウスクリーニングや内覧時の工夫で物件の印象を高め、そもそも値下げ交渉が起きない状態をつくることが、最も望ましい対応と考えられます。
リフォーム代の税務処理|譲渡所得の計算と申告手続き

売却前に改修工事を行ったとき、支払った金額を譲渡所得の計算上どこまで差し引けるのかは、売主の方から特に多く寄せられる疑問の一つです。
ここでは、リフォームにかかった費用が税務上どのように扱われるのかを順に確認していきます。
リフォーム代を取得費・譲渡費用として扱える範囲
税務上、リフォームにかかったお金は「資産の価値を高める支出(資本的支出)」なのか「今の状態を保つための支出(修繕費)」なのかによって、扱いが分かれます。
性能を向上させる設備の改良のように資産価値を押し上げる工事費は、取得費として計上できることがあります。一方で、原状回復や日常的な維持管理に近い修繕費は、取得費にも譲渡費用にも加えられない場合があります。
※参照:取得費となるもの|国税庁、建物の取得費の計算|国税庁
| 区分 | 具体例 | 取得費への算入 | 譲渡費用への算入 |
|---|---|---|---|
| 資本的支出(価値を高めるもの) | 増築・改築、性能アップを伴う設備の入れ替え | 算入できる場合あり | 原則として不可 |
| 修繕費(現状を保つもの) | クロスの張り替え、小規模な補修 | 原則として不可 | 原則として不可 |
| 売却に直接要した費用 | 仲介手数料・印紙税・測量費 | 算入できない | 算入できる |
売却前の工事費用のうち取得費へ加算できるのは資本的支出にあたる部分に限られ、支払った全額が経費として認められるとは限りません。
3,000万円特別控除とのかかわり
マイホーム(居住用財産)を手放す際は、租税特別措置法第35条による「3,000万円特別控除」の対象となることがあります。
譲渡所得から最高で3,000万円まで差し引ける制度のため、譲渡益が控除額の範囲に収まる場合は、譲渡所得税が課されないこともあります。
- 本人が居住していた家屋、または家屋と一緒にその敷地などを譲渡すること
- 譲渡した年の前年や前々年に、この特例や似た特例の適用を受けていないこと
- 住まなくなった日から3年が経つ日を含む年の12月31日までに売ること
- 親子や夫婦といった特別な関係にある相手への売却ではないこと
譲渡益が控除の枠内に収まるのであれば、リフォーム費用を取得費に加算できなかったとしても、税額面での実際の影響はそれほど大きくならない場合もあります。
確定申告時の注意点
譲渡所得を申告する際の基本として、リフォームに関する工事の契約書や内訳書、領収書を手元に残しておくことが大切です。
支出を資本的支出として取得費に含めるかどうかを検討するときは、こうした書類が判断材料になります。
税額の計算はケースごとの事情に左右されやすいため、最終的な判断は税理士などの専門家に確認したうえで進めると安心です。
よくある質問
売却を控えたマンションの改装に関して、読者の方から届くことの多い疑問を取り上げ、順に回答します。
売る前に行ったリフォームの代金は、販売価格へ転嫁できますか?
かけたリフォーム代を、その金額のまま売り出し価格に乗せるのは一般的に難しいとされています。
中古マンションの相場は、立地や築年数、専有面積といった要素によっておおむね決まり、室内の改装が価格に与える効果は大きくないためです。
費用を取り戻せるかどうかを見極めるには、何社かに査定を依頼し、改装した場合と手を加えずに引き渡す場合の査定額を見比べる方法が手堅いでしょう。
手を加えずに売り出すと、値下げ幅はどの程度になりますか?
どれだけ値下げになるかは物件のコンディションや相場の動きによって大きく異なるため、一律にはお示しできません。
もっとも、モデルケースで試算すると、100万円の値引きに応じた場合とリフォームを行った場合とで、手元に残る金額はおおむね変わらない結果になります。
大切なのは値下げを求められにくい売り方を考えることで、ハウスクリーニングや内覧の準備、複数社への査定依頼を通じて、そもそも価格交渉が起きにくい状況をつくる方法が効果的とされています。
内覧への備えはハウスクリーニングのみで足りますか?
多くの場合、ハウスクリーニングに部分的な補修と内覧直前の片付けを組み合わせれば、内覧には十分対応できると考えられます。
費用が3〜15万円のハウスクリーニングは、支出に対して得られる効果が大きい対策とされています。なかでもキッチン、浴室、トイレ、洗面という水回り4点をきれいにしておくと、内覧時の第一印象が良くなりやすいでしょう。
年数が経ったマンションでも、改装は不要と考えてよいですか?
築20年超の物件であっても、水回りや壁紙、床の傷みが深刻でなければ、改装をしなくてよい場合が多いとされています。
傷みがひどいときも、全面的な改装までは行わず、部分的な修繕とハウスクリーニングで対処できることがほとんどです。
何社かの不動産会社に実際に室内を確認してもらい、第三者としての意見を集めておくと判断しやすくなります。
壁紙は新しく張り替えておいたほうがよいですか?
壁紙は、かけた費用に対して効果を得やすい箇所とされているものの、張り替えが欠かせないわけではありません。
まずは汚れの目立つ部分だけを張り替える方法や、ハウスクリーニングで済ませられないかを検討するのが手堅い進め方です。
全部屋を張り替えると10〜30万円程度の費用がかかるので、複数社の査定を通じて、張り替えによってどの程度の価格アップが見込めるかを確かめたうえで決めるのがおすすめです。
まとめ|マンションを手放す前のリフォーム判断は「工事より先に査定」が基本
売り出す前のマンションに改修工事は基本的に必要ないと、本記事では考えています。
工事にかかったお金を売り出し価格へ上乗せしきれず、売主の負担だけが残ってしまう例が少なくありません。
それでも工事を考えるときは、まず何社かに査定を依頼して、価格がどの程度上がる見込みがあるかを確かめるところから始めるのが望ましいでしょう。
押さえておきたい要点を、あらためて整理します。
- 費用と効果のバランスで見極める:かけた金額に対して売れる値段がどれだけ上がりそうか、その倍率が1.0倍を上回るかどうかが目安になります
- 手を加えずに引き渡し、ハウスクリーニングだけで済ませるのが有効な場合が多い:3〜15万円程度で依頼できるクリーニングは、支出に見合う効果が特に大きいとされます
- インスペクションを取り入れて契約不適合責任への備えを:5〜10万円程度の費用で建物に不具合があるかを把握でき、引き渡し後のトラブルへの心配を軽くできます
- 1社だけの査定で決めない:3〜6社程度から見解を集めて見比べると、判断の精度を高めやすくなります
- 媒介契約や税金の扱いも一緒に確認:3種類ある媒介契約のうちどれを結ぶか、譲渡所得を算出する際に改修費用をどう扱うかもあわせて押さえておきましょう
「工事をした方がよいのか」と悩んだとき、真っ先に取りかかりたいのは工事業者への相談ではなく、不動産会社数社への査定依頼です。
各社の査定額がどの程度ばらつくか、どのような見解を持っているかを把握しておけば、多額の工事費を支払う前に筋の通った判断を下しやすくなります。
LIFULL HOME’Sの一括査定は提携している不動産会社の数が多く、地域や物件の個性に合った査定結果を見比べやすい点が強みです。
工事に踏み切るかどうかを決める材料となる各社の見解を、手間をかけずにまとめて集められます。
\最初に何社かへ査定を依頼/
![不動産 – LiPro[ライプロ]| あなたの「暮らし」の提案をする情報メディア](https://test01.vod-rich.com/wp-content/uploads/2026/10/lipro-realestate-logo-kari.png)


